【複数の候補から後継者選ぶには(No180)】

対話のチカラで事業承継を支援する『承継対話支援士®』の鹿島です。

3月16日から志師塾で、『事業承継コンダクター養成講座』という新しい講座が始まりました。

事業承継に関心がある意欲的な仲間が集まってくれました。

5時間立ち放しでしたが、疲れを感じないほど盛り上がりましたよ。

さて、事業承継の相談をいろいろと受けていますが、後継者候補が複数いる時に、どのようにして後継者を一人に絞り込めばよいかといった相談を受けることがあります。

後継者候補は一人の場合もあれば、複数いる場合もあります。

複数の後継者候補がいることだけでも羨ましい状況といえますが、後継者には一人しかなれません。

では、誰を後継者にするかが問題となることがあります。

親族内承継の場合でもめるのは、兄や姉よりも弟や妹のほうが優秀な場合です。

弟や妹が飛び抜けて優秀であれば別ですが、経営者(親)が誰を後継者にするのかを明確にしない状態を長く続けている場合は要注意ですよ。

先日も、弟さんを後継者にしたいが、長男の処遇をどのようにすればいいかという相談がありました。そして、後継者は兄の長男とは一緒に事業をしたくないと明確におっしゃっていました。

こうした場合、経営者が長男の処遇を慎重に考え、家族関係のバランスを保ちつつ、会社の安定を図ることが重要です。

以下のようなポイントを整理しながら対応策を考えていくとよいでしょう。


1. 経営者の意向を明確にする

まず、経営者自身が次男を後継者に指名する理由を整理し、長男にどのような配慮をするのかを明確にする必要があります。可能でしたら、早めに後継者候補に中から後継者を決めることをオススメします。

  • なぜ次男を後継者にするのか?
    • 経営能力やリーダーシップの観点から判断
    • 会社の将来を託せる資質を持っている
  • 長男に対してどのような選択肢を考えるか?
    • 会社に残る場合のポジション
    • 会社を離れる場合の補償や新たなキャリア支援

この意向を整理した上で、次のステップに進みます。


2. 長男の適切な処遇を検討する

長男が会社に留まることが難しい場合、いくつかの選択肢があります。

(1) 長男に対する退職支援や新たな役割の提示

長男が会社を離れることになった場合、以下のような支援を検討できます。

  • 関連会社や取引先への転職支援
    • 親会社や関係企業への推薦
    • 長男が活躍できる別のフィールドを用意
  • 独立の支援
    • 長男の希望があれば、新しい事業の立ち上げを支援
    • 会社の資産やノウハウを活用できるよう配慮
  • 金銭的な補償
    • 退職金や一時的な補償金を準備する
    • 株式を一定割合持たせ、配当を受けられるようにする

(2) 長男が会社に留まる場合の役割の調整

どうしても会社を離れたくない場合、次男と直接対立しない形で関与できる方法を考えます。

  • グループ会社や別事業部の責任者にする
  • 取締役会で一定の発言権を持たせる
  • 顧問や相談役としてサポートする形をとる

ただし、次男との折り合いが悪い場合、社内に留まることで対立が深まるリスクがあるため、慎重な判断が必要です。


3. 家族の関係を悪化させないためのコミュニケーション

後継者問題は、家族の関係を悪化させるリスクを伴います。長男が納得しないまま決定を下すと、のちのちトラブルの原因になるため、十分な対話が必要です。

(1) 家族会議の開催

  • 経営者の意向を冷静に伝える
  • 長男の意見を聞き、処遇について納得感を得られるようにする
  • 必要ならば専門家(事業承継アドバイザー、コンサルタント、弁護士など)を交えて話し合う

(2) 第三者を交えた調整

  • 長男・次男との個別の面談を実施し、それぞれの意向を把握する
  • 家族だけでなく、会社の役員や専門家の意見を参考にする
  • 「会社の発展を最優先に考える」という視点で調整を行う

4. 事業承継における株式の分配・経営権の調整

長男が会社を離れる場合、株式をどう扱うかも重要です。

  • 次男に経営権を集中させる場合
    • 長男には金銭的補償を行い、株を買い取る
    • 配当収益だけ受け取る形にする(経営には関与しない)
  • 長男に一定の株式を持たせる場合
    • 経営に口出しできないよう議決権を制限する仕組みを作る(種類株式の活用など)
    • 将来的な売却や相続の条件をあらかじめ決めておく

特に、長男が「自分の持分を売却して経営に影響を与える」といった事態を防ぐため、契約書を明確に作成することが重要です。


5. 会社全体への影響を最小限にする

社内においても、後継者の決定によって組織が混乱しないようにするための配慮が必要です。

  • 役員・幹部へ事前に周知し、意見を聞いておく
  • 社員に対して、スムーズな承継であることを説明する
  • 長男の処遇に関して誤解を生まないよう、適切な情報発信を行う

このような準備を行うことで、社内の動揺を最小限に抑えることができます。


まとめ

長男と次男が共に働くのが難しい場合、長男の処遇については 「経済的な補償」「新たなキャリア支援」「経営権の調整」 の3つの視点から対応を考えることが重要です。

特に、家族関係の悪化を防ぐためには、経営者の意向をしっかりと伝え、長男が納得できる形を模索することがカギ となります。その際、第三者の専門家を交えて調整を行うことで、感情的な対立を抑えながら円満な事業承継へとつなげることができるでしょう。

承継対話支援士 鹿島清人

承継対話支援士 鹿島清人

ジリリータジャパン代表の鹿島清人です。
後継ぎがイキイキと活躍している会社を増やしたいと思い、創業しました。
後継ぎが経営者になるための支援を通じて、「任せられる後継ぎ」を育て、20年続く、次の代まで続く事業と組織を創る支援を得意としています。

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