対話のチカラで事業承継を支援する『承継対話支援士®』の鹿島です。
10/29の自民党の日本成長戦略本部の会合で、国税庁が進めていた「取引相場のない株式(非上場株式)の評価の見直し」について「容認できない。白紙から議論を行うべき」と、11月から始まる税制調査会の前に、何とか歯止めがかかった感じですね。
この変更を見込んで組織再編やM&Aを仕掛けていた金融機関やコンサル会社からの提案は、一旦、保留しておくことをお勧めします。
さて、事業を続けていくうえで、事業承継だけでなく、M&Aで会社や事業を買収するということが増えてくるかもしれません。そんな時に起こりそうなことをテーマにしましたよ。
社名を引き継いでも、ロゴはそのまま使える?
事業承継で会社名や商号を引き継いだとき、「旧会社の看板やロゴも当然使える」と考えがちです。しかし、商号、商標権、ロゴの著作権は別の権利です。会社名を承継しただけで、旧会社のロゴを自由に使用できるとは限りません。
商号と商標は別物
商号は会社の名称として登記されるもの、商標は商品・サービスの出所を示す名称やマークです。会社名を登記できたことは、同じ文字やロゴをブランドとして全国で独占使用できる根拠にはなりません。会社名とロゴが商標登録されている場合、登録された商標権者が誰かを別途確認する必要があります。
まず、特許庁の登録原簿で、ロゴの商標登録番号、登録名義人、住所、指定商品・役務、存続期間、更新状況、質権や差押えの有無を確認します。登録名義が旧会社ではなく、創業者個人や関連会社になっているケースもあります。
名義変更と権利移転を区別する
同じ法人が社名や住所を変更しただけなら、商標権者そのものは変わらないため、「登録名義人の表示変更登録申請」を行います。表示変更登録をしても、特許庁の申請人登録情報まで自動的に更新されるわけではありません。
一方、事業譲渡などで旧会社から別法人へ商標権を移す場合は、「移転登録申請」が必要です。譲渡による特定承継では、移転登録によって法律上の効力が発生します。通常の商標権移転では、登録免許税は1件につき3万円です。合併や相続などの一般承継は、専用の申請と証明書類を用い、登録免許税は原則1件3,000円です。
譲渡証書、登記事項証明書、印鑑証明書などが必要になるほか、登録原簿上の名称や住所が現在と異なる場合は、表示変更を同時に求められることがあります。合併、会社分割、相続では申請書や添付書類が異なるため、承継形態を先に確定します。
ロゴの著作権は誰のものか
商標登録とは別に、ロゴのデザイン自体に著作権が成立することがあります。外注先に制作費を支払っただけでは、著作権が発注会社へ移るとは限りません。契約書に特別な定めがなければ、著作権がデザイナーや制作会社に残っている可能性があります。
承継前には、制作契約、発注書、請求書、メール、納品データを確認しましょう。著作権譲渡なのか、旧会社だけへの利用許諾なのか、承継会社も使用できるのかを点検します。譲渡を受けるなら、著作権法27条・28条の権利、改変、商品化、第三者への再許諾を含むか明記します。著作者人格権は譲渡できないため、色・形の変更やトリミングを予定する場合は、不行使の合意も確認します。
また、編集用データ、フォント、写真、イラストなど第三者素材の利用条件も別途確認が必要です。
承継前のチェックリスト
- 商号、商標権、著作権の権利者を一覧化する
- 登録原簿で名義、住所、指定商品・役務、更新状況を確認する
- 同一法人の名称変更か、別法人への移転かを整理する
- 移転登録の申請義務、費用、書類、協力期限を契約書に定める
- 制作会社との契約で、承継会社の使用・改変・再利用が認められるか確認する
「会社名を引き継いだ」「長年使ってきた」という事実だけでは、ロゴを安全に使える根拠になりません。商標の名義変更または移転登録と、ロゴ著作権・制作契約の確認を別々に完了させて、初めて安心してブランドを引き継げます。
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