対話のチカラで事業承継を支援する『承継対話支援士®』の鹿島です。
先日、とある取材を受けたのですが、1on1ミーティングに関するものでした。
そこで、今回のトピックは1on1を採り上げました。
🏁 【Ⅰ. 導入の考え方】―「承継対話」としての1on1ミーティング―
1️⃣ 目的を明確にする
1on1の目的は「成果管理」ではなく、関係性の深化と想いの共有です。
事業承継では特に、
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経営者の価値観・判断基準の伝承
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後継者の不安や疑問の共有
-
世代間の信頼関係構築
が大きなテーマになります。
2️⃣ 実施対象を広げる
事業承継における1on1の対象は、
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「現経営者 ↔ 後継者」
-
「後継者 ↔ 幹部」
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「幹部 ↔ 若手社員」
など、多層的な“承継ライン”で行うと効果的です。
これは“バトンリレー”の滑らかさを高める仕組みになります。
3️⃣ 対話テーマを「承継3層」で整理する
1on1のテーマを以下の3つに整理しておくと、承継の進捗が見える化します。
| 層 | 対話テーマ | 目的 |
|---|---|---|
| 経営層(理念) | 経営者の想い、経営哲学、判断基準 | 「何を大切にして経営してきたか」を伝える |
| 組織層(仕組み) | 人材育成・業務承継・意思決定の流れ | 実務を通して“暗黙知”を共有 |
| 個人層(関係) | 不安・期待・キャリアの希望 | 心理的安全性とモチベーションを高める |
4️⃣ 定着のコツ
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最初は月1回30分以内とする。
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評価や指導の場にしない。
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対話内容は口外せず、信頼を守る。
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「話を聴く」ことに徹する。
✅ 【Ⅱ. 事業承継に活かす 1on1チェックリスト(全10項目)】
| No | チェック項目 | 内容のポイント |
|---|---|---|
| ① | 目的を共有している | 「次世代への承継対話の場」として認識されているか。 |
| ② | 安心して話せる環境を整えた | 評価や上下関係を意識せず、率直に話せる雰囲気を作ったか。 |
| ③ | 前回の会話を覚えている | 小さな約束や話題を覚えておくことで、信頼が積み上がる。 |
| ④ | 経営者の価値観を言語化できた | 「なぜこの判断をしたのか」「何を守りたいのか」を説明できたか。 |
| ⑤ | 後継者の考え・感じていることを聴けた | 意見・不安・提案など、評価せずに聴く時間を取れたか。 |
| ⑥ | “過去”と“未来”を行き来する対話ができた | 「これまで」と「これから」の両方をつなぐ質問をしたか。 |
| ⑦ | 行動につながる一歩を一緒に決めた | 「次にやってみること」を本人の言葉で引き出せたか。 |
| ⑧ | 対話内容を簡単に記録・共有した | 継続的な対話のためにメモやログを残したか。 |
| ⑨ | 関係性の変化を感じ取れた | 信頼・理解・安心が前回より深まったと感じられたか。 |
| ⑩ | 対話の質を自己点検した | 「自分は聴けていたか」「承認できていたか」を振り返ったか。 |
💬 承継対話に使える質問例
| シーン | 質問例 |
|---|---|
| 経営者→後継者 | 「これからの会社で、何を一番大事にしたい?」 |
| 後継者→経営者 | 「これまでで一番、経営が苦しかった時はどんな時でしたか?」 |
| 幹部→後継者 | 「今後の方向性で、あなたが大切にしたい価値は?」 |
| 後継者→社員 | 「一緒に働いていて、もっと良くできそうなことは?」 |
🌱 まとめ:1on1は「承継の道具」ではなく「承継の文化」
事業承継は「仕組み」よりも「信頼の継承」です。
1on1を通じて“数字ではなく、想いが伝わる関係性”を築くことが、
結果としてスムーズな経営交代と組織の安定につながります。
お楽しみいただけましたか。
次回もお楽しみください。
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