心理的安全性と心理的ぬるま湯

社内のコミュニケーションをもっとよくしたいとお考えの関西の経営者や人事担当の方にお読みいただきたいブログです。

年末の朝、何気なくテレビをつけたらNHK BSP【指揮者なしのオーケストラ 第9に挑む】という番組が放送されていました。

初回放送が2022年5月8日だったそうです。

番組の内容は、2021年11月に東京の晴海で行われたベートベンの第9の演奏のドキュメントです。

演奏は、日本を代表するトップ奏者たちで結成された「トリトン晴れた海のオーケストラ」通称「晴れオケ」でした。

その演奏会は「圧倒的名演」と評されています。

その取り組みが驚きでした。なんと、ベートーベン最後にして最高の交響曲「第9」に、指揮者なしで挑むというものでした。

交響曲「第9」というのは歓喜の歌といわれ、シラーのメッセージをベートベンが交響曲にしたものです。

第9は作品の難易度がとても高く、オーケストラで演奏する際にはさまざまな楽器の調和を取るために指揮者という存在が欠かせない曲だと言われてきました。

「晴れオケ」は指揮者を置かない楽団です。

その晴れオケが第9に挑み始たのは、コンサート本番のわずか3日前です。

そこからプロの演奏者同士の格闘が始まりました。

第9の第1楽章の出だしは非常に小さな音から始まることもあり、指揮者がいないと、後ろの方で演奏する演者は曲のスタートするタイミングがとれなくなるのです。

もちろん、楽譜は用意されていますが、様々な楽器がそれぞれの役割を果たさないと調和の取れた音楽になりません。

実際に出演した何人かの演奏者が漏らしていましたが、「(第9を演奏するときには指揮者がいることが当たり前だったので)演奏することが怖くなった」と。

初日の演奏者の顔は困惑の色が隠せない様子でしたので、リーダー的な演奏者だけが気づいたことを発言するだけでした。

本番までに間に合うのかといった空気が流れていました。

しかし、2日目からは、演奏に参加した20~50代の74名の皆さんのプロ意識に徐々にスイッチが入ってきたようでした。

演奏して感じた違和感を解消するために第9の楽譜を読み込むことで、音符の欄外にベートベンが記載した文章の意味合いを理解しようとしたり、若手が漏らしたつぶやきのようなものをベテランが「それ、いただき」といって採用するといったことがいろいろな楽器のグループで起こり始めました。

この時に感じたことは、「心理的安全性が高いんだなぁ。」ということでした。

心理的安全性とは、何でしょうか?

心理的安全性を初めて提唱したのは、ハーバード大学教授・エイミー・エドモンソン氏という組織行動学の研究者です。

さまざまな組織で調査を行った結果、心理的安全性を「このチーム内では、対人関係上のリスクをとったとしても安心できるという共通の思い」と定義しました。

心理的安全性がビジネスの面から有名になったのは、Googleが「効果的なチームとは何か」を研究し、【心理的安全性】が高いチームは、業績がよく、離職率は低い、ということがわかったからです。

心理的安全性が低い状態では次の4つの不安があるとエドモンソン教授が述べています。

・無知だと思われる不安

・無能だと思われる不安

・邪魔をしていると思われる不安

・ネガティブだと思われる不安

しかし、「晴れオケ」に起こった変化は、上記の4つの不安と反対のことでした。

つまり、心理的安全性が高めるようにしたのです。

心理的安全性を高めるには、

・自由に意見や考えを話せる

・発言内容に耳を傾ける

・発言内容を否定しない、「いいね」と反応する です。

これは、わたしが行っている問活(といかつ)とまったく同じです。

心理的安全性という言葉は、自由に意見や考えを話せるということを【他人の考えに耳を傾けず、自分の言いたいことを一方的に伝える】ことだと勘違いされていることがあります。

心理的安全性が高い状態と誤解されやすい状況ですが、わたしはこの状態を【心理的ぬるま湯」と呼んでいます

心理的安全性が高い状態というのは、メンバーそれぞれが現状に甘んずること無く、違う意見や考えを述べることを周囲が受け入れている状態です。

つまり、成長を志向することが前提です

それに対し、心理的ぬるま湯の状態は、現状に満足している状態とか、なぁなぁで事なかれ主義といえる状態です。

「晴れオケ」のメンバーは、最初は自分と同じ楽器を演奏するメンバーだけで話しをしていました。

それが関連する楽器のチーム同士でアイデアを出し合うようになりました。

最後にはみんなが一体となってより良い第9をお客様に聴いていただきたいという一つの思いに集約されていったことが画面を通じても感じられました。

偶然観た番組でしたが、心理的安全性の重要性を改めて感じました。

それと、自分が勧めている問活(といかつ)という質問を使って社内のコミュニケーションをよくする活動が間違っていないことも認識できました。

問活にご興味があれば、個別相談をホームページからお申し込みください。

承継対話支援士 鹿島清人

承継対話支援士 鹿島清人

ジリリータジャパン代表の鹿島清人です。
後継ぎがイキイキと活躍している会社を増やしたいと思い、創業しました。
後継ぎが経営者になるための支援を通じて、「任せられる後継ぎ」を育て、20年続く、次の代まで続く事業と組織を創る支援を得意としています。

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