【AIは事業承継に使えるか?(No218)】

対話のチカラで事業承継を支援する『承継対話支援士®』の鹿島です。
事業承継が成功するか失敗するかは、経営者と後継者の対話の「質と量」に依存するといっても過言ではありません。
そこで、生成AIを使うことで事業承継へのハードルを下げることができないか考えています。


AIに“質問づくり”を外注しよう

事業承継の支援を続けていると、経営者・後継者・支援者の誰もが共通してつぶやく言葉があります。それは――
「何から聞けばいいのか分からない」 という悩みです。

70代の創業社長に、40代の後継者が「そろそろ将来の話をしたいんですが…」と言い出すのは勇気が要ります。
支援者から見ても、「こんな質問をしたら失礼にあたるのでは…」と気を使う場面は多い。
実は、事業承継で一番難しいのは “質問づくり” なのです。

そこで最近、私が支援の現場で強力におすすめしているのが
「AIに質問の“下書き”だけ作らせる方法」 です。


■AIに質問を外注すると、対話のハードルが一気に下がる

たとえば、いきなり「社長の引退計画はどうですか?」と聞くのは勇気がいります。
しかし、AIに「柔らかく、角の立たない質問を作ってください」と指示すると、こんな形で返ってきます。

  • 「将来の働き方について、今どんなイメージを持たれていますか?」

  • 「社長が大切にしてきた価値観を、次の世代にもつなぐためには何が必要でしょうか?」

  • 「ご家族や社員が安心するために、今整理できることはありますか?」

これらはあくまでAIがつくった素案にすぎません。
でも、人が一から考えるより“きっかけ”が生まれます。
そして、人が自分の言葉に置き換えることで、質問はもっと自然なものになります。

後継者からは「これなら父に聞けそうです!」という声が上がり、
支援者からは「面談の流れを作りやすい」と評判です。
対話のハードルが目に見えて下がっていくのを実感します。


■AIの強みは“共感”ではなく“下書き力”

ここで重要なのは、AIは感情に共感できないし、責任も取れない という点です。
AIが出した質問が不適切な場合もあり、内容が間違っていることもあります。
だからこそ、
AIを「下書き係」と割り切る のがちょうどいい距離感です。

AIは大量の質問パターンから文章を組み立てるのが得意。
でも、その質問を使う・使わないは 最終的に人間が判断します。

この仕組みは、経営者にも後継者にも支援者にも負担が少なく、実践しやすいのが特徴です。


■現場で効果が出る、具体的な進め方

① AIに「質問の目的」を伝える

例:「後継者と経営者が将来の話を始めるための質問を作ってください」

② AIに「柔らかい言い回しで」と依頼

事業承継では語気が強いと対話が止まるので、柔らかさが重要です。

③ 出てきた質問を“そのまま使わない”

必ず自分の会社・自分の関係性に合わせてアレンジします。

④ 経営者と後継者で選んでみる

「この質問なら話せる」というものが必ず見つかります。

⑤ 面談で使い、終わった後に振り返る

うまくいった質問をストックしていくと、次第に自社独自の“対話資産”が増えていきます。


■AI活用は、地方の中小企業こそ効果が大きい

都市部では顧問や専門家に相談しやすい環境がありますが、地方では「誰に相談すればいいのか分からない」という声が多いものです。
その点、AIは24時間いつでも利用でき、質問づくりの負担を軽くしてくれます。

もちろん、AIに任せすぎるのは危険です。
AIはあくまで 参考程度
正しいかどうかの検証や、会社の状況に合うかの判断は必ず人が行わなければなりません。

ですが、 “対話のきっかけづくり”という用途に限れば、AIは最高の補助ツールになります。


■まとめ:AIは「事業承継の対話」を前に進める最強の“補助輪”

  • 人だけで質問をつくるのは難しい

  • AIに下書きを外注すると一歩踏み出しやすい

  • 最終判断と責任は必ず人が持つ

  • 質問が良くなると、事業承継は一気に進む

事業承継は「対話」がすべての始まりです。
もし今、何を話せばいいか分からず立ち止まっているなら、
AIに“質問の下書きを作らせる”ところから始めてみませんか?

きっと、次の一歩が、思ったより軽くなるはずです。

承継対話支援士 鹿島清人

承継対話支援士 鹿島清人

ジリリータジャパン代表の鹿島清人です。
後継ぎがイキイキと活躍している会社を増やしたいと思い、創業しました。
後継ぎが経営者になるための支援を通じて、「任せられる後継ぎ」を育て、20年続く、次の代まで続く事業と組織を創る支援を得意としています。

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